ゾンビ鹿病とは、正式には慢性消耗病(Chronic Wasting Disease, CWD)と呼ばれる疾患で、主にシカを含むウシ目(シカ科、ウシ科など)の動物に感染し、脳に異常なプリオン蛋白を蓄積させることにより発症します。この病気は、感染した動物が急速に体重を落とし、強い消耗状態に陥ることが特徴で、結果的に死に至ります。その様子がまるでゾンビのように見えることから、「ゾンビ鹿病」という俗称がつけられました。
発症と症状
ゾンビ鹿病に感染した動物は、以下のような症状を示します。
- 重度のやせ細り
- 歩行困難
- 無関心または人間に対する異常な恐れがない
- 唾液、鼻水、涙の過剰分泌
- 食欲不振
- 支離滅裂な行動
症状の出現から死亡に至るまでの期間は、感染後数ヶ月から1年以上と幅広いですが、一度症状が現れ始めると、治療法がないため死に至ります。
伝播方法
ゾンビ鹿病は、主に感染した動物の体液(唾液、血液、尿、糞)を介して他の動物に伝播します。また、感染した動物の死骸やその部位が土壌に接触することで、その土壌が長期間にわたって感染源となることもあります。プリオン蛋白は非常に耐久性があり、環境中で長期間にわたって活性を保つことができるため、一度環境に入ると除去が非常に困難です。
地理的分布
ゾンビ鹿病は北アメリカを中心に広がっており、アメリカ合衆国の複数の州やカナダの一部地域で確認されています。また、韓国やノルウェーなど、北アメリカ以外の国々でも報告されています。
人間への影響
現時点では、ゾンビ鹿病が人間に直接感染する証拠はありません。しかし、類似のプリオン疾患であるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)などが人間に重大な健康影響を及ぼすことが知られているため、ゾンビ鹿病に感染した可能性がある動物の肉を食べることは推奨されません。
対策と管理
ゾンビ鹿病の管理と対策は、感染が疑われる動物の早期検出と排除、感染地域での狩猟制限、および感染動物の移動制限に焦点を当てています。また、狩猟者に対しては、狩猟した動物を食べる前に検査を受けるよう推奨しています。しかし、プリオン蛋白の耐久性と環境中での長期存続のため、一度広がり始めるとこの病気の拡散を完全に食い止めることは非常に難しいです。